FAMILY'S INTERVIEW 武雄で暮らす人々

金属の粉を練るのも、小麦粉を練るのも同じ。「モノづくり」の情熱を石窯に込めて。 イメージ1

金属の粉を練るのも、小麦粉を練るのも同じ。「モノづくり」の情熱を石窯に込めて。

2026.02.22

武雄の温泉街の入り口に、温かな明かりを灯す一軒のピッツェリアがあります。 「ピッツェリア コペルティーナ」のオーナー、田栗裕輔さん。

33年間、精密な金属加工の世界で「品質」と向き合ってきた元エンジニアが、なぜ50代でピザ職人への道を選んだのか。そこには、職人としての飽くなき探究心と、大切な家族への想いがありました。

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管理職になって気づいた「自分の手で作りたい」という本能

生まれも育ちも武雄。大学卒業後、地元で就職した田栗さんは、金属を削る工具を作るメーカーで33年間、モノづくりの最前線を走り続けてきました。

「元々、自分の手で触って、モノを改良したり開発したりすることが大好きだったんです。」 しかし、キャリアを重ねて管理職になると、仕事はデスクワークが中心に。書類にハンコを押す日々に、田栗さんの心には少しずつ違和感が芽生え始めます。

「やっぱり自分で何かやりたい、チャレンジし続けたい。」

そんな時、ふと訪れた唐津のピザ屋さんが、田栗さんの人生を変えることになります。

「ピザ作りは、前職の技術と全く同じだったんです。」

石窯で焼かれた一枚のピザ。その美味しさに感動した田栗さんは、驚くべき「共通点」に気づきました。

「前職に『粉末冶金(ふんまつやきん)』という、金属の粉を焼き固める技術があるんです。粉に水を混ぜて練り、成形して窯で焼く。その工程が、ピザ作りと全く一緒だったんですよ。」 朝夕の気温、湿度の変化で焼き方を変える職人の世界。エンジニアとして長年培ってきた感覚が、「これだ!」と直感的に結びついた瞬間でした。

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ピザ作りの研究がスタート、自宅の庭に石窯を手作り

そこからの行動力は、まさに「モノづくりびと」そのものでした。 どこかへ修行に行くのではなく、まずは自宅のオーブンで研究を開始。オーブンでそこそこのものが焼けるようになると小さな石窯を買い、それでも物足りなくなると、ついには自宅の庭に大きな石窯を自作してしまいました。

「近所の方に配ったら『すごく美味しい!』と喜んでいただけて。それが背中を押してくれました。」

そんな田栗さんの挑戦を支えたのが、娘さんの存在です。調理師免許とスイーツコンシェルジュの資格を持つ彼女と「いつか一緒にやりたいね。」と語り合っていた夢が、退職を機に現実へと動き出しました。

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目の前で「美味しい」と言ってもらえる、かけがえのない喜び

いざオープンしてみると、趣味とプロの違いに圧倒される日々。複雑なオペレーションや仕入れの難しさに頭を抱えることもありましたが、そこは調理現場の経験がある娘さんが心強いパートナーとなってくれました。

「サラリーマン時代は、自分の作った製品が誰に届いているか見えませんでした。でも今は、目の前のお客様が笑顔で食べてくれる。追加で注文をいただいたり、テイクアウトまでしてくださる。その反応が直接見られることが、今の僕の自信になっています。」

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武雄の街に、新しい風と「思い出」を

店内には、中二階のような不思議なロフトスペースがあります。ここは将来、グランドピアノを置くために設計した場所。

「40歳から始めたピアノを、今も毎日練習しています。お客様の誕生日に、照明を落として映像を流し、僕のピアノ生演奏で『ハッピーバースデー』をお祝いしたいんです。料理だけでなく、大切な思い出を提供できる場所にしたい。」

武雄は今、新しいことに挑戦する若い世代が増え、「新しい風」が吹き始めている街だと田栗さんは言います。

「この温泉街の入り口に明かりを灯し続け、みんなが安らげる場所にしていきたいですね。」 エンジニアからピザ職人へ。形は変われど、田栗さんが練り上げるのは「人を幸せにするためのモノづくり」。 今日も石窯の前で、田栗さんは最高の「一枚」と「思い出」を焼き上げています。

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武雄そしてお結び課について

ー 武雄市ってどんなところ?

武雄市は、県外から訪れる方々も口を揃えるほど「人の温かさ」に溢れ、災害も少なくとても住みよい街です。また、一度県外で生活したからこそ深く実感できる、地元のお米や新鮮な食材といった「食事の美味しさ」も大きな魅力です。私自身もこのお店から新しい風を吹かせていきますので、ぜひ武雄に足を運んでみてください。

ー 武雄市のおすすめのスポットは?

武雄神社の大楠
武雄温泉 楼門

 

INFORMATION

Pizzeria Copertina(ピッツェリアコペルティーナー) オーナー 田栗裕介
instagram @copertina202505
Web site https://copertina2025.my.canva.site/

 

編集後記

インタビューを終えて 「粉を練って焼く」という共通点から始まった第2の人生。40歳からのピアノ挑戦など、常に自分をアップデートし続ける田栗さんの姿に、勇気をいただいた取材でした。娘さんとの阿吽の呼吸で生まれるデザートとピザ。ぜひ、武雄の空気と一緒に味わってみてください。

取材・撮影:落水恒介