FAMILY'S INTERVIEW 武雄で暮らす人々

スターバックスシアトル本社から始まり武雄市の通信制教育現場へ。多様性の「仕組み」を知る彼女が、生徒たちと描く未来。 イメージ1

スターバックスシアトル本社から始まり武雄市の通信制教育現場へ。多様性の「仕組み」を知る彼女が、生徒たちと描く未来。

2026.03.01

佐賀県武雄市。温泉街としての情緒と、西九州新幹線の開通による活気が混じり合うこの街で、不登校や引きこもりなど、さまざまな背景を持つ生徒たちに寄り添う一人の女性がいます。 神村学園高等部 (武雄校舎・上峰校舎)で英語担当スタッフとして働く、德永るみ子さん。

アメリカの大学を卒業後、スターバックス本社のオフィス勤務、ベトナムホーチミン市や東京の日本語学校勤務など、異業種でのキャリアを歩んできた彼女が、なぜ今、この地で教育に携わっているのか。その軽やかな生き方の根底にある「多様性」への視点と、武雄への想いを伺いました。

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「自由」への憧れと、新天地への挑戦

福岡県の出身で、小売業を営む家庭で自由奔放に育った德永さん。中学高校は教育環境の整った私立女子校に通いながらも日本の画一的な教育制度に、言葉にできない違和感を抱いていたと言います。

「小学生の時に見学したインターナショナルスクールの光景が、今も忘れられません。そこには、日本の学校にはない圧倒的な『自由』と、自分たちで考え、発言する生徒たちの姿がありました。直感的に『私はあっち側に行きたい』と思ったんです。」

その憧れは、成長とともに「外の世界」への強い関心へと変わります。「国連職員になりたい」という夢を抱いた彼女は、自ら情報を集め、両親の協力を得て、アメリカオレゴン州へと飛び出しました。

「国連職員になるためには、第二外国語が必須でしたので、大学では中国語と中国文学を専攻しました。多様なルーツを持つ友人たちと議論を交わした時間は、今の私の基礎になっています。」

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海外生活で学んだ「真の多様性」

大学卒業後、德永さんが選んだキャリアは、当時日本に1号店が誕生して間もない頃のスターバックス(Starbucks Coffee Company)シアトル本社。 全米や海外の顧客からの注文を管理する部署で、多忙な日々を送りながら、彼女は大きな衝撃を受けます。それは、企業の徹底された「仕組み」でした。

「オフィスや店舗では民族や国籍はもちろん、宗教や特性など彩りの違いがあっても同等に、当たり前に働いていました。どんな背景を持つ人でも情熱と意欲さえあれば誇りをもって仕事ができる。多様性を単なる言葉ではなく、誰もが活躍できる『マニュアルとシステム』として機能させている。その企業の姿勢に、深く感銘を受けました。」

この「正解は一つではない。誰もが輝ける場所がある」という実体験が、現在の彼女の生徒への接し方にも色濃く反映されています。

流れに身を任せ、辿り着いた「武雄」という街

その後、「日本人としてのアイデンティティ」を再構築するために帰国。九州女子大学の文学部国文科へ社会人編入し、日本語教師の資格を取得。ホーチミン市や東京で日本語教師として活動するなど、德永さんのキャリアは常に「身軽」です。

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武雄への移住のきっかけも、家族の事情や偶然の縁でした

「年齢的にターニングポイントに差し掛かっていた頃であり、妹が佐賀県白石町に嫁いでいたことや、母が祖母の介護をしていたことなどが重なり、そのタイミングでの移住でした。たまたま武雄市役所がオークションに出していた土地に縁がありました。移住した時、ちょうどスタバの武雄店がオープンの時期で、オープニングスタッフとして働かせてもらっていたのですが、ふとしたきっかけで神村学園に出会い、通信制課程という特殊な教育環境に惹かれ、気づけば今の仕事に全力投球です。(笑)」

こだわりを捨て、恩恵を授かる。目の前の与えられたチャンスに飛び込み、それを面白がり、波に乗る生き方。そんな彼女のスタイルは、どこか武雄の街の空気感とも似ています。

生徒たちが「自分なりの色」で未来を描けるように

現在、德永さんは学校のスタッフとして、生徒一人ひとりとフラットに向き合っています。

「かつての私がそうだったように、今の生徒たちも既存の枠組みに苦しんでいたり生きづらさを抱えていたりします。私の役割は、彼らに無理やり枠をはめることではありません。彼らが自分なりの色で自由に未来を描けるよう、英語というツールを通じて彼らに「自信」を届け、自分たちの力でちゃんと生きていけるような路、「仕組み」を作っていきたいんです」

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世界を見てきた彼女だからこそ、伝えられることがあります。

「武雄という街が、もっと多種多様な生き方を受け入れる開かれた場所になれば、子どもたちの可能性はもっと広がるはずです」

その軽やかで芯のある眼差しは、今日も武雄の教室から、世界へと続く扉をそっと開いています。

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武雄そしてお結び課について

ー 武雄市ってどんなところ?

一言で表すなら「都会だけど人里っぽい街」ですね。西九州の中心にあるので、少し足を伸ばせば福岡や長崎、唐津にもすぐに行けて、海にも山にもアクセスできるのが魅力です。観光地としてサッと見て回るというよりも、「実際に住んでみてこそ良さがわかる街」だと思います。 だからこそ、「いろんな人に知ってほしい気持ちもあるけれど、独り占めしたいからあまり知られたくない。」というのが本音です(笑)。 ただ、これから武雄に移住して家を建てようと思っている方に、一つだけアドバイスがあります。武雄は自然が豊かで霧や湿気がとても多いので、家を建てるなら多湿に強い木造にした方がいいですよ!と茶目っ気たっぷりに笑ってくれました。

ー 武雄市のおすすめのスポットは?

武雄市図書館

 

INFORMATION

德永 るみ子
神村学園高等部 武雄校舎・上峰校舎
Web site https://kamimuragakuen-10forest.com/

 

編集後記

世界を見てきた德永さんが今選んでいるのは、通信制高校の生徒たちと向き合うこと。多様性を単なる理想ではなく、誰もが機能する「仕組み」として捉えるプロフェッショナルな視点と、流れに身を任せる軽やかさ。その絶妙なバランスが、言葉に確かな説得力を与えていました。「何事にも固執しない」と語る彼女が描く新しい教育の形、そしてこれから德永先生の教え子たちがどんな活躍を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。

取材・撮影:落水恒介