FAMILY'S INTERVIEW 武雄で暮らす人々

「森林の循環」をデザインする。武雄市役所・野田涼太さんが描く人と森のつながり。 イメージ1

「森林の循環」をデザインする。武雄市役所・野田涼太さんが描く人と森のつながり。

2026.03.08

武雄で育ち、高専で専門技術を学び、愛知の自動車工場や東京のベンチャー企業でキャリアを積んできた野田涼太さん。28歳で故郷に戻り、現在は武雄市役所 農林課の副主幹として、林業の現場に新しい風を吹き込んでいます。

「地元に対して『嫌だ』とか『不便だ』と感じたことが、一度もなかったんです。」

一度は外の世界を経験しながらも、ごく自然な流れで地元に戻ってきた野田さん。その歩みと、今取り組んでいる「森林を未来につなぐしごと」について話を伺いました。

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高専から愛知、そして東京へ。技術を磨いた20代

武雄で育った野田さんは、進路選択の際に「理系が好き」という直感と先生からの勧めもあり、佐世保高専(佐世保工業高等専門学校)へ進学します。

「普通科に行って大学受験に追われるよりも、早い段階から専門知識を身につけてエンジニアとして働きたいという思いがありました」

5年間の自由な校風の中でエンジニアとしての技術力と思考プロセスを培った野田さんは、卒業後、愛知県にあるトヨタ系のグループ企業に就職します。担当したのは「生産技術」。工場そのものを設計する仕事でした。

「パソコン上で工場のラインを構築し、ロボットの配置や動きをシミュレーションして、何秒で車1台が完成するかを計算する。最も効率的な『製造の現場』をデザインする業務でした。」

その後、「地元に帰る前に一度は東京を経験しておきたい」という思いから23歳で上京。データ復旧の企業で、ハードディスクの物理的な修理やデータ救出という、非常にニッチで緻密な技術を要する仕事に携わります。

愛知での大規模な製造現場と、東京での繊細な復旧作業。この両極端な「エンジニア」としての経験が、今の野田さんの土台となっています。

「面白いことができそう」――直感で飛び込んだ市役所の世界

28歳のとき、親の年齢や家業(自動車整備業)のことも考え、武雄へ帰郷。1年ほど実家を手伝いながらこれからの進路を考えていたとき、当時の武雄市の動きが目に留まりました。

「図書館の刷新など、武雄市が全国的にも話題になっていて。『なんか面白いことやってるな』と外から見て感じていたんです。」

ちょうどその頃募集されていた、年齢制限のない「社会人枠」の採用試験。民間の経験を求めている市役所なら、自分の経歴を活かして何か地元の力になれるかもしれない。そんな直感を頼りに、行政の世界へと飛び込みました。

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林業を「憧れの職業」へ。現場を支える新しい仕組み

現在、野田さんが向き合っているのは「武雄の森林」です。戦後に植えられた木々が成長し、今まさに「使い時」を迎えている日本の森林。林業には、「植える→育てる→切る→使う」という循環が不可欠ですが、最大の問題は「人手不足」でした。

「仕事はいくらでもあるのに、担い手が足りない。それなら、林業のイメージを変え、働く環境を良くすることが必要です。」

そこで令和7年度に取り組んだのが「林業食堂」です。

冬の厳しい山仕事の合間、冷えたお弁当を車内で食べるのが当たり前だった現場にキッチンカーを派遣。森の中で出来たての温かい食事を楽しんでもらうプロジェクトです。

「福利厚生の一環として始めたのですが、この様子がTVやYouTubeなどで取り上げられて、それを見た若い世代が就職説明会に来てくれるなどの手応えがありました」

エンジニアが工場のラインを最適化するように、野田さんは林業の「働く環境」を最適化しようとしています。

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地元の木を、地元の未来へつなぐ

野田さんがもう一つ力を入れているのが、「木材の地産地消」です。

「木は、使ってこそ価値が生まれ、次のサイクル(植栽)につながります」

最近完成した「若木公民館」などの公共施設には地元の木材をふんだんに活用。また、市が所有する「柏岳(かしわだけ)」の整備では、伐採した木を加工し、遊歩道の階段やベンチとして利用する予定です。

「地元の山で育った木を、地元の人が使う。このシンプルな循環を丁寧に作っていきたいんです。柏岳など、自然に気軽に触れられる場所をきっかけに、子どもの頃から森林の価値や大切さに気づいてもらうことも、とても大事だと思っています。」

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武雄そしてお結び課について

ー 武雄市ってどんなところ?

「安心感があるまちですね。でも同時に、新しいことにも挑戦している。外に出たからこそ、地元の価値がよりはっきりと見えるようになりました」“帰る場所”でありながら、“挑戦できるフィールド”でもある。エンジニアとしての冷静な分析力と、地元を愛する情熱。その両方を併せ持つ野田さんは、今日も武雄の豊かな森の未来をデザインしています。

ー 武雄市のおすすめのスポットは?

「柏岳(かしわだけ)」
武雄町と朝日町にまたがる、市民に親しまれてきた山。
現在、遊歩道や展望台の改修が行われており、自然の心地よさや地元の木の魅力に、より気軽に触れられる場所へと生まれ変わろうとしています。

 

INFORMATION

武雄市役所 農林課
武雄温泉駅観光案内所/武雄 旅 書店
Instagram @nourin_takeocity
FaceBook @武雄市役所農林課

 

編集後記

「地元を嫌いになったことが一度もない」と笑う野田さん。温かな「林業食堂」は、効率的なエンジニアの視点と現場への優しさが形になった名案です。彼が手掛ける柏岳(かしわだけ)の遊歩道が子どもたちの笑い声で溢れる日は近いはず。新しい感性と確かな技術で更新される武雄の森。爽やかな語り口に、地域の未来がさらに豊かになるワクワク感を抱かされるインタビューでした。

取材・撮影:落水恒介