FAMILY'S INTERVIEW 武雄で暮らす人々

自衛隊を辞めて東京から自転車で武雄へ。馬場潤希さんのお金では買えない豊かさ。 イメージ1

自衛隊を辞めて東京から自転車で武雄へ。馬場潤希さんのお金では買えない豊かさ。

2026.02.01

「職業を聞かれたら、いつも少しぼやかして『自営業です』って答えるんです。あえて言うなら、高齢者向けの便利屋でしょうか。」

そう笑って話すのは、武雄市で「まごのてサービス」を営む馬場潤希(ばば・じゅんき)さん。

東京で育ち、高校卒業後は海上自衛隊に入隊し主に航空部隊の整備士として勤務を経て、なぜか自転車で武雄へとたどり着いた彼。最初から移住するつもりだったわけではなく軽いノリでした。ガツガツ稼ぐことよりも、波があればサーフィンへ行き、山に登る。そんな彼が、地域の高齢者から「本当の孫」のように愛される理由と、独自の幸福論に迫りました。

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レールを外れて見つけた、グアムの風と自転車旅

馬場さんは、いわゆる「移住者」ですが、実は生まれた場所は武雄。母親の里帰り出産で産声をあげ、その後は多感な時期を東京で過ごしました。

高校卒業後に入隊したのは、海上自衛隊。航空機の整備を5年ほど担当していましたが、23歳の時、ふと立ち止まります。

「このままでいいのだろうか、と自分の生き方に悩んでしまって。一度レールを外れてみようと退職を決めました。」

辞めた後、初めて訪れた海外・グアムで受けた衝撃が、今の彼のベースにあります。

「現地の人が、仕事をしているのか分からないくらい楽しそうに、豊かに暮らしていたんです。その光景が、それまでの僕の価値観を壊してくれました。」

次の仕事も決めず、時間だけはたっぷりある。それなら武雄にいる祖父や母に会いに行こう。そう思い立った馬場さんは、東京から武雄まで自転車で、キャンプをしながら旅をするという選択をしました。

衝撃を受けた、地域の人々の温かさと事業継承

その旅の様子を毎日Facebookで発信していたことが、運命を変えます。

「僕の旅中の投稿を母が毎日シェアしてくれて、それを新聞販売の店主さんが見ていて、『面白い若者が来るぞ』と盛り上がってくれていたんです(笑)。」

武雄に到着後、新聞屋さんが読者サービスとして行っていた「便利屋」の活動を手伝い始めます。2年後、その方がリタイアするタイミングで事業を継承。それが「まごのてサービス」の始まりでした。

今では、スマホの操作説明から庭の草刈り、エアコン掃除まで幅広くこなす馬場さんですが、活動の原点は、一番最初に伺ったお宅でお客様から受けた依頼にあります。

「『はがきを出したいから切手を買ってきてほしい』というご依頼でした。はがきの送り先はその新聞屋さんだったので僕が直接預かれば済む話だったのですが、どうしても切手が欲しいと。買って渡した瞬間、その方が信じられないくらい喜んでくれたんです。」

東京では経験したことのない、濃密な人との繋がり。 お金だけではなく、お茶や野菜を当たり前のように差し出してくれる「おもてなし」の文化。馬場さんは、その温かさに大きな衝撃と感動を覚えたと言います。

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「稼ぐこと」に執着しない、自分らしい「スローライフ」

馬場さんの働き方は、現代の「キャリアアップ」という概念とは少し異なります。

「正直、稼ぐことにあまり執着がないんです。例えば月20万円あれば十分なら、無理にそれ以上稼ごうとは思いません。それよりも、空いた時間で波が良さそうだったら唐津へサーフィンに行ったり、天気がよければ黒髪山に登ったり、家でゆっくり読書をしたりする方が、僕にとっては価値があるんです。」

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独自の仕事観と「孫のような」距離感

丁寧すぎる敬語を使うのではなく、あえてフランクに、時には「孫」のように接する。

「『業者とお客様』というドライな関係ではなく、『人と人』としての繋がりを大切にしています。変に遠慮しすぎずフランクに話したりすることもあります。近所の『孫』のように接してもらえる距離感が心地いいですね。」

現在は一人で活動している馬場さんですが、既に見据えている「次」のカタチがあります。

「今は『馬場さんだから頼む』という属人的な状態ですが、僕一人のキャパには限界があります。今後は、副業やスキマ時間を使って地域を手伝える若者が集まるような、『お助け隊』の仕組みを作っていきたい。このモデルが武雄から作れたら、面白いなと思っています。」

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武雄そしてお結び課について

ー 武雄市ってどんなところ?

馬場さんから見た武雄は、「田舎すぎない田舎」。

「車を15分走らせれば中心街に行けてなんでも揃う。Amazonもすぐ届く。それでいて、少し行けば豊かな自然がある。都会の感覚を維持したままスローライフができる、すごく恵まれた環境です。福岡や長崎へも車で1時間程度で行けるので都会の人が想像する何もない田舎ではなく非常に便利で恵まれた環境だと思います。」

ー 武雄市のおすすめのスポットは?

黒髪山
武雄温泉元湯

 

INFORMATION

まごのてサービス (清掃業・庭作業・便利業)
Web site https://www.magonote-tko.com/
instagram @Magonote Service Takeo

 

編集後記

「便利屋」という看板を掲げながら、彼が提供しているのは作業そのものではなく、安心感や「人との繋がり」という目に見えない価値なのだと感じました。「稼ぐこと」を目的化せず、自分にとっての「足るを知る」を実践する馬場さんの生き方は、これからの時代の豊かさのスタンダードになっていくのかもしれません。

取材・撮影:落水恒介